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学習ノートEMANの物理学◆マクスウェルの速度分布

元記事

「速度分布の導出法」セクション

いきなり指数関数を導入したことに論理の飛躍を感じる人もあるだろうが、ここで指数関数を使うしか選択肢が無いことを計算で厳密に導く事も出来る。 ただ、それをここでやると今の議論の本質に関係ないテクニック的な要素が入り込んでしまってややこしくなってしまうのでやめた。 気になって仕方無い人は、純粋に数学的、パズル的な話だから証明してみればいい。

自分でやってみよう。

粒子が(vx, vy, vz)〜(vx + dvx, vy + dvy, vz + dvz)の範囲の速度をとる確率を、
確率密度g(vx, vy, vz)を用いて表すと

g(vx, vy, vz)・dvx・dvy・dvz

となる。x, y, z-方向の速度成分の分布は互いに独立かつ等価なので

g(vx, vy, vz) = f(vx)・f(vy)・f(vz)

と表せる。この確率密度の値は、もちろん vx, vy, vz の3つを与えれば定まるのだが、
u = vx2 + vy2 + vz2(= v2) さえ与えられれば、
個々の vx, vy, vz の値が異なっても、共通の値をとる、と仮定できる。
そこで、この確率密度関数を、さらに G(u) とおくことにする。

G(u) = G(vx2 + vy2 + vz2) = f(vx)・f(vy)・f(vz)……(*)

(*)はvx, vy, vz についての恒等式であるので、好きな値を代入してよい。
そこで、(*)から関数Gの満たすべき条件を得るために、以下の4つの場合を考える。

(vx, vy, vz) = (a, 0, 0), (0, b, 0), (0, 0, c), (a, b, c)

これらを(*)に代入すると、

G(a2) = f(a)・f(0)・f(0)
G(b2) = f(0)・f(b)・f(0)
G(c2) = f(0)・f(0)・f(c)
G(a2 + b2 + c2) = f(a)・f(b)・f(c)

以上4式から f(a), f(b), f(c) を消去すると、G(および定数f(0))のみで書かれた関係式が得られ、

G(a2 + b2 + c2) = G(a2)・G(b2)・G(c2) / [f(0)]6

となる。この関係式は a, b, c の具体的な値によらず成り立つので、G は

G(● + ▲ + ■) = (定数)・G(●)・G(▲)・G(■)

を満たす関数である。このような性質を満たすのは指数関数であり(#)、

G(t) = α・exp(βt)

という形をしているはずである。したがって(*)に戻って

g(vx, vy, vz) = G(vx2 + vy2 + vz2) = α・exp(β(vx2 + vy2 + vz2))

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(#)の詳細:

G(x + y + z) = k・G(x)・G(y)・G(z)

(y, z) に定数 (0, Δ) を代入すれば

G(x + Δ) = [k・G(0)・G(Δ)]・G(x)

右辺の中括弧の定数を c とすれば

G(x + Δ) = c・G(x)

と整理される。つまり、「G の値は、x が Δ だけ増えると、c 倍になる」と読める。
もちろん c は、Δ ごとに定まる定数である。
x が 2Δ 増えれば c2 倍に、3Δ 増えれば c3 倍に……なるわけで、指数関数が示唆される。

さて、これを x で微分すれば、(d / dx)(x + Δ) = 1 に注意して

G'(x + Δ) = c・G'(x)

つまり、「G の導関数 G' も、x が Δ だけ増えると、c 倍になる」と読める。

いま x = 0 として、G'(0) と G'(0 + Δ) の関係を考えると

G'(Δ) = c・G'(0)

c = k・G(0)・G(Δ) を書き戻せば

G'(Δ) = k・G(0)・G(Δ)・G'(0)

これは定数 Δ の具体的な値によらず成り立つので、
関数 G の満たすべき微分方程式を与えている、と見ることができる。
Δ を(変数らしく)t と書き直し、順序を整えると

G'(t) = [k・G(0)・G'(0)]・G'(t)

右辺の中括弧の定数を β とおけば

G'(t) = β・G(t)

これを解けば

G(t) = α・exp(βt)
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