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学習ノート◆数学ガール(無印)

p70

あとに続く「4.2.5 解決」を読んでから再びここを見返したとき、「僕」の方法ではなぜ行き詰まったのか考えてみよう。

例えば $\frac{1}{6} = \frac{1}{2 \times 3} = \frac{1}{2} - \frac{1}{3}$ とか $\frac{1}{x^2 - 1} = \frac{1}{(x - 1)(x + 1)} = \frac{1}{2} \left(\frac{1}{x - 1} - \frac{1}{x + 1} \right)$ という変形に馴染みのある人は多いかも知れない。これを見て分かるように、いわゆる部分分数分解の結果が、分数の(和ではなく)差として与えられることは珍しくない。「僕」は母関数を $\frac{1}{1 - rx} + \frac{1}{1 - sx}$ と置いて失敗しているが、 $\frac{1}{1 - rx} - \frac{1}{1 - sx}$ と置いていれば、$R, S$の導入を省くことができ、かなり近道ができたはずである。 \[\frac{1}{1 - rx} - \frac{1}{1 - sx} = \frac{(r - s)x}{1 - (r + s)x + rsx^2}\] から \[\frac{x}{1 - (r + s)x + rsx^2} = \frac{1}{r - s} \left( \frac{1}{1 - rx} - \frac{1}{1 - sx}\right)\] により、 $r + s = 1, rs = -1$ となる $r, s$ を用いて母関数を右辺の形に変形することができる。

$r,s$ すら導入するのが嫌なら、少々煩雑ではあるが母関数の分母を平方完成したのち因数分解して、 \[1 - x - x^2 = \left(1 - \frac{x}{2} \right)^2 - \frac{5}{4}x^2 = \left( 1 - \frac{1 + \sqrt{5}}{2} x \right) \left( 1 - \frac{1 - \sqrt{5}}{2} x \right)\] を得ておき、 \[\frac{1}{1 - \frac{1 + \sqrt{5}}{2} x} - \frac{1}{1 - \frac{1 - \sqrt{5}}{2} x} = \frac{\sqrt{5}x}{\left( 1 - \frac{1 + \sqrt{5}}{2} x \right) \left( 1 - \frac{1 - \sqrt{5}}{2} x \right)}\] となることから、 \[\frac{x}{1 - x - x^2} = \frac{1}{\sqrt{5}} \left( \frac{1}{1 - \frac{1 + \sqrt{5}}{2} x} - \frac{1}{1 - \frac{1 - \sqrt{5}}{2} x} \right)\] と変形することができる。 $r,s$ は、ここに繰り返し登場する $(1\pm \sqrt{5})/2$ を略記したものと考えてもよい。

p86

$ab$ の符号にかかわらず $\sqrt{a^2b^2} = |ab| \geq ab$ である。すなわち、 $\frac{a^2+b^2}{2}$ と $\sqrt{a^2b^2}$ はともに $ab$ 以上であるが、両者同士の大小関係はまだ分からない。

$ab \geq 0$ の場合は $\sqrt{a^2b^2} = ab$ であるので、ただちに $\frac{a^2+b^2}{2} \geq \sqrt{a^2b^2}$ が示される。いっぽう、 $ab < 0$ のときは $\frac{a^2+b^2}{2} > 0 > ab$となるが、 $\frac{a^2+b^2}{2}$ (正)よりも $ab$ (負)のほうが $0$ から遠ければ $\frac{a^2 + b^2}{2} < \sqrt{a^2b^2}$ となってしまうので、そういうことが起こり得ないことを確認する必要がある。

これは、テキストの通りに示す方法のほかに、 $ab < 0$ のとき、 \[\frac{a^2 + b^2}{2} - \sqrt{a^2b^2} = \frac{a^2 + b^2}{2} - |ab| = \frac{a^2 + b^2}{2} - (-ab) = \frac{(a + b)^2}{2} \geq 0\] とする方法もある。

また、 $\frac{a^2 + b^2}{2}$ と $\sqrt{a^2b^2}$ はともに $0$ 以上なので、二乗同士を比較して \[\left( \frac{a^2 + b^2}{2} \right)^2 - \(\sqrt{a^2b^2} )^2 = \left( \frac{a^2 - b^2}{2} \right)^2 \geq 0\] と、場合分けをせずに証明することもできる。

p141

【発展問題】ミルカさんの解法に用いた経路図を使って、「僕」が得た漸化式を説明することもできる。経路をどのように分類すれば漸化式を説明できるか?

p144

括弧の数をプラスの数が越えてはいけないという制約がある。

ミルカさんはサラッと言っているが、こういうのを自分でまとめるのはとても難しい。しっかり考えたいところ。

p151

難しいことをやっているように見えるかも知れないが、恐れる必要はない。p156の結果を先取りすると \[K(x) = \sqrt{1 - 4x} = 1 - 2x - 2x^2 - 4x^3 - 10x^4 - 28x^5 - \cdots\] から \[C(x) = \frac{1 - K(x)}{2x} = \frac{1 - (1 - 2x - 2x^2 - 4x^3 - 10x^4 - 28x^5 - \cdots)}{2x}\] \[= 1 + x + 2x^2 + 5x^3 + 14x^4 + \cdots\] と計算できる。これを考慮すれば、 $C_n = -K_{n+1}/2$ という関係は容易に頷ける。

p156

出てくるパターンに注意しながら、繰り返し微分しよう。

これも意外に難しい。微分を行うごとに、係数に(奇数)×(-1/2)×(-4)=2×(奇数)が掛かってゆく。 例えば $K^{(4)}(x)$ を微分するとき、$-2 \cdot 6 \cdot 5 \cdot 4$ に $2 \cdot 7$ を掛けることになるが、末尾の $4$ を $2$ 倍して、さらに $7$ を掛けると考えれば、 $(6 \cdot 5 \cdot 4) \cdot (2 \cdot 7) = 6 \cdot 5 \cdot 8 \cdot 7 = 8 \cdot 7 \cdot 6 \cdot 5$ となり、パターンが見えやすくなる。

p290

表に「(1) $P_8$ の一部」とあるが、実際には $P_8$ のすべてが登場していることに注意。ちなみに、「(2) $P_7$ の一部」では、 $P_7$ のうち、1円玉を用いない方法がすべて登場する。これらは一般の $P_{n+2}$ に対する $P_{n+1}$ および $P_n$ について成り立つ。

p299

無限積で成り立つ不等式を有限積で打ち切ってもやはり成り立つのかどうか、疑問に思うかもしれない。特に今回の場合、 $0 < x < 1$ では $1/(1 - x^k) > 1$ であり、 $n$ が大きければ大きいほど右辺が増大する。右辺の $n$ として十分大きなものを与えてよいのなら問題ないが、左辺の $P_n$ の $n$ と同じ値で打ち切らなければいけないので、不等式が成り立つ保証がないように見える。

この疑問を解決するためのポイントは、「 $n$ 円を作るためには、 $m$ 円玉は高々 $n/m$ 枚しか用いられない」ということである。例えば4円を作るとき、1円玉は4枚まで、2円玉は2枚まで、3円玉は1枚まで、4円玉は1枚までしか用いられることがない。したがって $P_4$ を求めるためには、 $(1 + x + x^2 + x^3 + x^4)(1 + x^2 + x^4)(1 + x^3)(1 + x^4)$ を展開して $x^4$ の係数を見れば十分であり、項をそれ以上とっても $x^4$の係数には影響しない。実際に展開してみると \[1 + x + 2x^2 + 3x^3 + 5x^4 + 5x^5 + 6x^6 + 7x^7 + 7x^8 + 6x^9 + 5x^{10} + 5x^{11} + 3x^{12} + 2x^{13} + x^{14} + x^{15}\] となり、 $P_4$ までは正確に係数に反映されていることが分かる。 したがって \[P_4x^4 < (1 + x + x^2 + x^3 + x^4)(1 + x^2 + x^4)(1 + x^3)(1 + x^4)\] が成り立つ。いま、右辺の各括弧内は $1/(1 - x^k)$ の級数展開を途中で打ち切ったものであるので、 \[P_4x^4 < \frac{1}{1 - x} \cdot \frac{1}{1 - x^2} \cdot \frac{1}{1 - x^3} \cdot \frac{1}{1 - x^4}\] が成り立つ。同様のことが一般の $n$ についても言える。

p299

不等号が $<$ から $\leq$ に変わっているのは、 $P_0$に配慮したものと思われる。しかし、その後の議論では厳密には $n = 0$ の場合を包摂できない箇所がある。

《東の森》の $\sum_{k = 1}^{n}$ は添え字が $1$ から始まっている。 $0$ から始めてしまうと分母がゼロになってしまうので具合が悪い。 $n = 0$ のときは《東の森》全体がゼロになると考えるのが妥当か。《東の森》の評価結果には影響しない。

《西の丘》の評価の最終段階で $\log_{e} (1/x) < 1/t$ を $n$ 倍する際、 $n=0$ を考慮すると不等号を $<$ から $\leq$ に変える必要がある。《東の森》のほうが $<$ であるので、合計した後の評価には影響しない。

最終段階の $g(t)$ の評価においても、 $n = 0$ のときは $t = \sqrt{6n}/\pi$ が $t$ の変域から外れてしまうので、ここで $g(t)$ は最小値をとることができず、その値は「下限」でしかない。したがって $\log_{e} P_n < K \cdot \sqrt{n}$ の不等号も $\leq$ にする必要がある。もちろん、上界の定義から、 $K \cdot \sqrt{n}$ が上界のひとつであることに変わりはない。

……てなことを考えると、最初にとっとと $n = 0$ を除外したほうが良さそう。テキストも暗黙に除外しているフシがある。

p302

テイラー展開後の《東の森》の評価の過程を、 $\sum$を用いずに書き下してみる。 \[ + \frac{x}{1} + \frac{x^2}{2} + \frac{x^3}{3} + \frac{x^4}{4} + \cdots \] \[ + \frac{x^2}{1} + \frac{x^4}{2} + \frac{x^6}{3} + \frac{x^8}{4} + \cdots \] \[ + \frac{x^3}{1} + \frac{x^6}{2} + \frac{x^9}{3} + \frac{x^{12}}{4} + \cdots \] \[ + \frac{x^4}{1} + \frac{x^8}{2} + \frac{x^{12}}{3} + \frac{x^{16}}{4} + \cdots \] \[ + \cdots \] \[ + \frac{x^n}{1} + \frac{x^{2n}}{2} + \frac{x^{3n}}{3} + \frac{x^{4n}}{4} + \cdots \] 縦に串刺しにして(ここで和の順序を入れ替えているので、本来は注意が必要)、等比級数の公式を用いると \[ < \frac{x}{1(1 - x)} + \frac{x^2}{2(1 - x^2)} + \frac{x^3}{3(1 - x^3)} + \frac{x^4}{4(1 - x^4)} + \cdots \] \[ = \frac{x}{1 - x} \left[ \frac{1}{1 \cdot 1} + \frac{x}{2(1 + x)} + \frac{x^2}{3(1 + x + x^2)} + \frac{x^3}{4(1 + x + x^2 + x^3)} + \cdots \right] \] \[ < \frac{x}{1 - x} \left[ \frac{1}{1 \cdot 1} + \frac{x}{2(x + x)} + \frac{x^2}{3(x^2 + x^2 + x^2)} + \frac{x^3}{4(x^3 + x^3 + x^3 + x^3)} + \cdots \right] \] \[ = \frac{x}{1 - x} \left( \frac{1}{1^2} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} + \frac{1}{4^2} + \cdots \right) = \frac{x}{1 - x}\cdot\frac{\pi^2}{6}\]

p307

ここの議論は $t$ を介さないほうが見通しが良いように思われた。 $0 < x < 1$ より $1/x > 1$ 、このときの $\log_e(1/x)$ を評価する。 $1/x = 1 + u$ とおくと、 $u = (1/x) - 1 > 0$ であり、 $\log_{e} (1 + u) < u$ から $\log_{e} (1/x) < (1/x) - 1$ 。右辺は、《東の森》の最後に置いた $t$ をあえて用いれば $1/t$ とも書ける。

p308

$g(t)$ の評価には相加・相乗平均の関係が使える。 $t > 0, n > 0$のとき \[ g(t) = \frac{n}{t} + \frac{\pi^2}{6}t \geq 2\sqrt{\frac{n}{t} \cdot \frac{\pi^2}{6}t} = 2\pi\sqrt{\frac{n}{6}} = \frac{\sqrt{6}\pi}{3}\sqrt{n} \] 等号は $n/t = (\pi^2/6)t$ すなわち $t = \sqrt{6n}/\pi$ のときに成立する。