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学習ノート◆数学ガール・フェルマーの最終定理

p46

解答2-5

$a$と $c$が互いに素で、 $c - a = 2A, c + a = 2C$のとき、 $A$と $C$は互いに素といえる。

この定理を、後で応用の利く形に整理するために、 $a, c$を用いずに書き直してみよう。 2つの等式が $a = C - A, c = C + A$と同値であることに注意すれば、2整数 $C > A > 0$に対し
【 $C - A$ と $C + A$ が互いに素であるならば、 $C$ と $A$ は互いに素である。】
と書ける。すなわち、この定理は「2数の差と和が互いに素ならば、もとの2数同士も互いに素である」と述べている。これは直感的には成り立ちそうな気がするが、すぐには判断しがたいかもしれない。ためしに対偶をとれば
【 $C$と $A$が互いに素でなければ、 $C - A$と $C + A$は互いに素でない。】
となる。こう書き直せば、かなり自明なことのように感じられてくる。実際、 $C$と $A$が公約数 $d ( \geq 2)$を持つならば、$C = dC'$、 $A = dA'$と書くことができ、 $C - A = d(C' - A')$、 $C + A = d(C' + A')$となって、ともに $d$の倍数である。テキストでは実質的にこれと同じ証明が、背理法の形で述べられている。

では、この定理の逆、すなわち2整数 $C > A > 0$に対し
【 $C$と $A$が互いに素であるならば、 $C - A$と $C + A$は互いに素である。】
は成り立つだろうか?

たとえば $C = 7, A = 3$のとき、 $C$と $A$は互いに素であるが、 $C - A = 4$と $C + A = 10$は互いに素にならない。このような反例が存在することから、逆は成り立たないことが分かる。すなわち、 互いに素であるような $C, A$ のうち、一部の組み合わせだけが $C - A$ と $C + A$ を互いに素にするのである。この違いはどこから来るのであろうか?

これを考えるために、まず、もとの定理において、 $C - A$と $C + A$が互いに素であることから、 $C$と $A$が互いに素であること以外に、どんなことが導かれるのか調べてみよう。

$C - A$と $C + A$との差が $2A$、すなわち偶数であることに着目すると、 $C - A$と $C + A$の偶奇は一致する。偶奇が一致して、なおかつ互いに素であるということは、両者はともに奇数のはずである(ともに偶数だと、公約数 $2$を持ってしまう)。 $C - A$が奇数であることから(あるいは $C + A$が奇数であることを用いてもよい)、 $C$と $A$の偶奇は異なる。

以上の考察から、2整数 $C > A > 0$に対し
【 $C - A$ と $C + A$ が互いに素であるとき、 $C$ と $A$ は互いに素であり、 $C$と $A$の偶奇は異なる。】
という定理が得られる。

実は、この定理の逆、すなわち、2整数 $C > A > 0$に対し
【 $C$と $A$が互いに素であり、 $C$と $A$の偶奇が異なるとき、 $C - A$ と $C + A$ は互いに素である。】
が成り立つ。先ほどの反例では、$C$ と $A$がともに奇数であったために、逆が成り立たなかったのである。

この逆定理の証明は、同書のp236〜p237で行なわれている。ここを読む際には、背理法による証明の中で $m, n$が互いに素であること以外に $m, n$の偶奇が異なることも用いられている点を見落とさないようにしよう。

さて、なぜこの逆定理をここで整備したかと言うと、それは次のノートに関連しているからである。

p51

$a, b, c$が互いに素になることも、簡単な計算で示すことができる。

「3数が互いに素」という表現は、定義が曖昧。p44で詳述しているように、一般の3つの正の整数(ピタゴラス数をなすとは限らない)の最大公約数が $1$であっても、そのうちの任意の2数が互いに素であるとは限らない。整理すると、
(ア)最大公約数が $1$
(イ)互いに素となる2数のペアが存在する
(ウ)どの2数をとっても互いに素である
という条件を考えることができ、これらは下に行くほど強い条件である。すなわち(ウ)⇒(イ)⇒(ア)が成り立つ。(ア)は成り立つが(イ)は成り立たない例として $(6, 10, 15)$が、(ア)(イ)は成り立つが(ウ)は成り立たない例として $(3, 4, 6)$や $(3, 6, 7)$がある。

原始ピタゴラス数をなす3数に限って言えば、上記のような反例が存在せず、(ア)(イ)(ウ)はすべて同値となる。

「簡単な計算で示すことができる」とあるところは、読み流さずに自分でも考えてみると良い。と言いつつネタバレになるが、その方法のひとつとして、p46のノートで触れた「逆定理」を用いることができる。

まず、2整数 $m > n > 0$について、「互いに素であるか否か」「偶奇が一致するか否か」を考えるとき、 $m, n$の代わりに $m^2, n^2$を用いても完全に結果が一致することを確認してほしい(これは「明らか」とは言えないが、証明を省略する)。

これが納得できたら、p46のノートにある「逆定理」において $C = m^2, A = n^2$とおいてみよう。すると、 $m^2 - n^2$と $m^2 + n^2$が互いに素であることが導かれ、上記(イ)が言える。

p51

異なる素数同士は互いに素だから……

ここでの記述は誤っているわけではないが、一読したときに持った印象と、詳しく調べてみたあとの印象とが喰い違っていたので、書き留めておく。

上の表は、 $m, n$が各々 $1$から $17$の値をとったときに、原始ピタゴラス数の種(タネ)となりうるかどうかを調べたものである。色の付いたマスは互いに素である組合せである。また、「 $m > n$」「偶奇が異なる」の少なくとも一方に反するものには斜線を引いてある。すなわち、「色が付いており、かつ斜線で抹消されていないもの」が、原始ピタゴラス数の種を与える。

マスには色分けを施してある。緑は「一方が $1$であるもの」、赤は「素数同士」、オレンジ色は「素数と合成数のペア」、水色は「合成数同士」である。

この表を眺めると「素数の列」というものが必ずしも原始ピタゴラス数の種の主役を演じていないように感じられてくる。たまたま $n = 2$とした場合には、 $m = 3$以降の素数はいずれも種となる(素数以外にも、 $9$や $15$も種となる)が、 $n$として $2$以外の素数(すなわち奇数となる)をとると、「 $m > n$」および「偶奇が異なる」という条件から、 $m$に素数を用いることは全く不可能になってしまう。表で言えば赤いマスは $n = 2$の行を除いて全滅している。また、 $n = 2$で生き残っているのも、「素数だから」と言うよりは「奇数だから」と言ったほうがよいように思う。

この箇所、自分だったらどう書くだろうか?最も明快に書けるのは $n = 1$の場合である。 $1$はいかなる正整数とも互いに素だから、あとは $m > 1$かつ $m$が偶数であればよい。つまり $m = 2, 4, 6, \ldots$ とすれば、すべて原始ピタゴラス数の種となる。

p60

「異なる原始ピタゴラス数には、異なる有理点 $(a/c, b/c)$ が対応する。《原始ピタゴラス数が無数にある》と《単位円周上に有理点が無数にある》は同値。」

ここでは、《原始ピタゴラス数が無数にある》→《単位円周上に有理点が無数にある》は示されているが、逆の議論が省略されている。

単位円周上の有理点(正確には第一象限にあるものに限る)のうち、 $(a/c, b/c)$ という形になる、つまり $x$ 座標・ $y$ 座標を既約分数で表したときに分母が共通となるものについては、 $a,b,c$ の組が原始ピタゴラス数となり、異なる点は異なる原始ピタゴラス数を与える。しかし、そのような形で書けない(分母が共通でない)点が存在するかもしれない。したがって、たとえ単位円周上の有理点が無限に存在したとしても、そのうち原始ピタゴラス数を与えるものが無限に存在するという保証はない。

実は、単位円周上の有理点は【すべて】 $(a/c, b/c)$ の形になることが証明できる。以下、有理点 $(a/c, b/d)$ (ただし $a\perp c, b\perp d, c > 0, d > 0$ )が単位円周上にあるとき、 $c=d$ となることを示す。

$(a/c)^2 + (b/d)^2 = 1$ の両辺に $(cd)^2$ を掛けると $(ad)^2 + (bc)^2 = (cd)^2$ ……(*) となる。これを $(ad)^2 = c^2(d^2 - b^2)$ と変形すれば、 $(ad)^2$ は $c^2$ の倍数、したがって $ad$ は $c$ の倍数となる。いま、 $a\perp c$ により、 $d$ は $c$ の倍数であることが言える。

今度は(*)を $(bc)^2 = d^2(c^2 - a^2)$ と変形すれば、 $(bc)^2$ は $d^2$ の倍数、したがって $bc$ は $d$ の倍数、 $b\perp d$ より $c$ は $d$ の倍数である。

以上により、 正数 $c, d$ は互いの倍数であることになり、 $c = d$ が言える。

p138

この証明は $p$ が素数であることを用いていないことに注意。すなわち、素数でなくとも、すべての正の整数に対して、「砕ける」⇒「4で割った余りが3でない」、あるいはその対偶の「4で割ると3余る」⇒「砕けない」が成り立つ。しかし、逆は成り立たない。合成数では、4で割ると3余るもの(15, 27, 35……)は素数同様に砕けないが、余りが3でないものの中にも、6,12,21,22など、砕けないものが存在する。

余りが3でないのに砕けない数はすべて合成数であり、 $p$ を素数に限った場合には、「砕ける」⇔「4で割ったときの余りが3でない」である。もっとも、4で割り切れる素数は存在せず、2余る素数は2だけであるので、実質的には
「 $p$ が砕ける」⇔「 $p = 2$ 、または $p$ を4で割った余りが1である」
と書ける。

p209〜p211

ここに挙げられた環の公理のうち、乗法についての交換法則を課さないものを「環」と呼び、課すものを特に「可換環」と呼ぶことも多い。いずれにせよ、環は乗法に関してアーベル群とは限らないだけではなく、そもそも群とは限らないことに注意。すなわち、ここでは乗法に関する交換法則ではなく、乗法に関する逆元の存在が問題となっている。環は乗法に関してモノイドをなし、可換環は乗法に関して可換モノイドをなす。いっぽうで、加法に関しては環の公理から(可換環でなくとも)交換法則が成り立ち、アーベル群をなす。

なお、流儀によっては環の定義に乗法単位元の存在を課さないこともあり、その場合には乗法単位元の存在する環を特に「単位的環」あるいは「ユニタリー環」と呼ぶ。この定義では、(単位的とは限らない)環は乗法に関して半群をなし、可換環は可換半群をなす。

p231〜

「僕」があちこちぶつかりながら証明の完成にこぎつける過程が描かれているのがこのくだりの持ち味であるが、自分で証明を再現するときには整理を試みるのが良い。

$m, n$ から $e,f,s,t$ の議論へと落とし込む際に、できれば $m, n$ のことは忘れてしまいたいので、 $m, n$ の性質を $e,f,s,t$ だけで記述できないかどうか考えてみる。 $m,n$ は偶奇の異なる互いに素な2数であった。これと、 $e,f,s,t$ を導入した際の等式から $m,n$ を消去すると、 \[ \left\{ \begin{array}{c} e^2 + f^2 = s^2 \\ e^2 - f^2 = t^2 \end{array}\right. \] ただし、 $e,f,s,t$ はどの2つをとっても互いに素であり、 $e^2$ と $f^2$ の偶奇は異なる。これで $m,n$ の条件を完全に翻訳したことになる。 上の2式は \[ \left\{ \begin{array}{c} s^2 + t^2 = 2e^2 \\ s^2 - t^2 = 2f^2 \end{array}\right. \] と同値であり、さらに \[ \left\{ \begin{array}{c} (s + t)^2 + (s - t)^2 = 4e^2 \\ (s + t)(s - t) = 2f^2 \end{array}\right. \] と変形できる。いま、$e^2$ と $f^2$ の偶奇が異なることから $s,t$ はともに奇数(最初の2式を参照せよ)、したがって $s + t, s - t$ はともに偶数であり、各々 $2x, 2y$ と置けて、 \[ \left\{ \begin{array}{c} x^2 + y^2 = e^2 \\ 2xy = f^2 \end{array}\right. \] と書き直せる。なお $s \perp t$ を書き直すと $(x + y) \perp (x - y)$ ゆえ $x \perp y$ 。これと第2式から、$x,y$ の一方を $2u^2$、他方を $v^2$ ( $v$ は奇数、 $u \perp v$ )と置くことができ、このとき第1式は $(2u^2)^2 + (v^2)^2 = e^2$ となる。

p259

$A^2 + B^2 = C^2$ となることは、 $(m^2 - n^2)^2 + (2mn)^2 = (m^2 + n^2)^2$ が恒等式であることから言えることであり、必ずしも $m = c^2, n = a^2$ を代入しなくてもよいことに注意。

この恒等式は原始ピタゴラス数の一般解として既に登場しているが、ここでは「原始」にこだわらずに、 $m,n$ に自由に整数を入れてピタゴラス数を作ることを考える。

いま、ピタゴラス数をなす3数の例として $(a,b,c) = (4,3,5)$ を考え、この証明で何を行なっているのかを見ることにする。

$(4,3,5)$ のうちの $5$ (斜辺の長さに当たる)と、もうひとつを勝手に選んで(ここでは $4$ とする)、これらを種(タネ)として、新たなピタゴラス数を作ってみる。 $m = 5, n = 4$ とおけば $m^2 - n^2 = 9,\ 2mn = 40,\ m^2 + n^2 = 41$ となるが、これら3数は確かに $9^2 + 40^2 = 41^2$ を満たしており、ピタゴラス数をなす。このうちの $9$ は、もとのピタゴラス数のうち、用いずにおいた $3$ の平方に等しくなっていることに注意。

この新しいピタゴラス数を辺の長さに持つ直角三角形の面積は $9 \times 40 / 2 = 180$ となるが、もとの $(4,3,5)$ からどのように求まったのかを考えると、 $3 \times 3 \times 4 \times 5$ と書くことができる。

いま、$a^4 + b^4 = c^4$ を満たす正の整数の組が存在すると仮定すると、これは各辺の長さ $p, q, r$ がいずれも平方数になるような直角三角形が存在する( $p^2 + q^2 = r^2$ )ことにほかならない。このとき、上記の操作で作った新しい直角三角形の面積は $pq^2r$ となるが、もしも $p,q,r$ がいずれも平方数であれば、この面積も平方数になるはずである。これは既に証明された定理と矛盾する。

p317

$Q = q^4$ と置くと、\[ (1 - q^{4k})^2(1 - q^{8k})^2 = (1 - Q^k)^2(1 - Q^{2k})^2 \\ = 1 - 2Q^k - Q^{2k} + Q^{3k} - Q^{4k} - 2Q^{5k} + Q^{6k} \] これを $f_k (Q)$ と書くと、 $F(q)$ の $q^{29}$ までの係数を正しく求めるには $F(q)/q = \prod_{k = 1}^{\infty} f_k (Q)$ の $Q^7( = q^{28})$ までの係数を求めればよい。以下に筆算を示す。 \[ \begin{array}{cccccccc} 1&-2&-1&4&-1&-2&1&0 \\ 1&\ &-2&\ &-1&\ &4&\ \\ \hline 1&-2&-1&4&-1&-2&1&0 \\ \ &\ &-2&4&2&-8&2&4 \\ \ &\ &\ &\ &-1&2&1&-4 \\ \ &\ &\ &\ &\ &\ &4&-8 \\ \hline 1&-2&-3&8&0&-8&8&-8 \\ 1&\ &\ &-2&\ &\ &-1&\ \\ \hline 1&-2&-3&8&0&-8&8&-8 \\ \ &\ &\ &-2&4&6&-16&0 \\ \ &\ &\ &\ &\ &\ &-1&2 \\ \hline 1&-2&-3&6&4&-2&-9&-6 \\ 1&\ &\ &\ &-2&\ &\ &\ \\ \hline 1&-2&-3&6&4&-2&-9&-6 \\ \ &\ &\ &\ &-2&4&6&-12 \\ \hline 1&-2&-3&6&2&2&-3&-18 \\ 1&\ &\ &\ &\ &-2&\ &\ \\ \hline 1&-2&-3&6&2&2&-3&-18 \\ \ &\ &\ &\ &\ &-2&4&6 \\ \hline 1&-2&-3&6&2&0&1&-12 \\ 1&\ &\ &\ &\ &\ &-2&\ \\ \hline 1&-2&-3&6&2&0&1&-12 \\ &\ &\ &\ &\ &\ &-2&4 \\ \hline 1&-2&-3&6&2&0&-1&-8 \\ 1&\ &\ &\ &\ &\ &\ &-2 \\ \hline 1&-2&-3&6&2&0&-1&-8 \\ \ &\ &\ &\ &\ &\ &\ &-2 \\ \hline 1&-2&-3&6&2&0&-1&-10 \end{array} \] この筆算を実際にやってみると分かるが、同じ数を繰り返し書く作業が多く、特に後半は大幅に省略することができる。

p321

楕円曲線では $s(23)$ までしか求めていないのに、 $F(q)$ を $q^{29}$ まで計算させているのは、つまり、「やる気のある人は $s(29)$ を求めてみなさい」ってことでしょうか結城先生!?

……という意図かどうかはともかく、登場人物たちの感動を味わうために、あえて手作業で数えてみたい、と言う人は $s(29)$ にチャレンジしてみてはどうだろう。とはいえ、 $29 \times 29$ 通りのすべてを試すなど気の遠くなる話である。そもそも「僕」は $s(19)$ と $s(23)$ を担当したはずだが、 $19 \times 19 + 23 \times 23$ 通りを全部試したのだろうか?そんな馬鹿な!

「僕」がどんな方法で数えたのかは分からないが、 $a = 0,1,2, \ldots, 28$に対して、 $a^2 \bmod 29$ および $(a^3 - a) \bmod 29$ をそれぞれ計算して一覧表を作り、両者が一致する組み合わせを数えれば、かなり労力は削減される。後者は $a(a^2 - 1)$ と変形すると少し楽。